井上有一

●有一は、たっぷりの墨をふくませた大筆に全身の躍動をゆだねて、身の丈を越える和紙に向かって力強く等身大に一字を書いた。
●その墨塊と飛沫とは、字でありながら生命力に満ちた独自の表現空間をつくり、言語の異なる西洋の人々をも感動させた。
●人々が消費経済に酔う中で、彼は「貧」一字を大きく書き、生まれたままの健全なこの身と心を保って元気に生きることが何より大切だと“書”で主張した。
●師弟関係による習字の技術指導を拒絶し、元気に自由に書くのが良いと言った彼は、早くから国際美術展に迎えられながらも、職業芸術家となることを拒否し、生涯を小学校教師として過ごした。
●彼は旧習に“一切の断絶”を宣言し“一匹狼”として生きた。没後彼の業績は注目され、二十世紀後半を代表する偉大な芸術家の一人として世界に認められるようになった。
●このような“Super Calligrapher”としての彼の出発は1945年3月10日東京大空襲での仮死体験にあり、1950年戦後派としての名乗りをあげ、代表作として一連の「東京大空襲」シリーズなどがある。

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